2006年06月01日

木下夕爾:内部

「梅雨と花蓮の夜」にて朗読する木下夕爾さんの作品の一部をご紹介いたします。

木下夕爾

内部


その窓は閉ざされたままだった

中には誰もいなかった


机の上はきちんと片付いていた


読みさしの本が置いてあり

インクの壺はからからに乾いていた


これから何かがはじまるようにみえた

もう終わったあとかもしれなかった





とにかくひっそりかんとしていた


壁には古びた人物像の

眼だけが大きくかがやいていた


それに追い立てられるように

窓枠のすきまから覗いていたてんとう虫は

向きをかえ背中を二つに割って

燃える光の中へ飛び去った



木下夕爾 Kinoshita Yuuji:詩人・俳人(1914〜1965)
広島県福山市御幸町出身。府中中学(現・府中高校)時代から詩作を始める。
薬局を営むかたわら、文学活動を続けた。第一詩集「田舎の食卓」で文芸汎論詩集賞を受賞。その後、詩集を刊行し、戦争期から句作も始めた。
‘46久保田万太郎主宰「春燈」に参加。
posted by netwarp at 08:37| Comment(0) | TrackBack(0) | Event:「花連の夜」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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